浄福寺のご住職様から「御朱印をはじめましたのでぜひお越しください。」との連絡が入りましたので、さっそく伺ってきました。御朱印を頂いたあと「境内には大きな木がたくさんありますね。」と話し始めたところ、浄福寺境内にある色々な木々の由緒ついて伺うことが出来ました。
最初の話は仏教三聖木と呼ばれる菩提樹、沙羅双樹、無憂樹(ムユウジュ)について。書院の玄関に向かって左手に大きな菩提樹があります。(右の木は前回紹介した、白い花を咲かせる巨大なキンモクセイです。)
枝という枝には菩提樹の花のつぼみがふさふさと下がっています。まもなく開花していい香りを漂わせることでしょう。
昨年の実が枝に残っていたのでいただきました。本来は秋になると竹とんぼのようにくるくる回りながら落ちてきます。ただこの木は、実が地面に落ちてもなかなか発芽しないんだそうです。京都市内でもこのように大きく育った菩提樹は真如堂、永観堂など5箇所のみとか。本来の仏教典(大きな菩提樹の樹の下でお釈迦様が悟りを開いた)に出てくる菩提樹はクワ科のインドボダイジュ(Ficus religiosa)だそうですが、日本で菩提樹として植えられるのは中国から伝わったこの木、シナノキ科のTilia miquelianaです。
そして次はサラソウジュ。菩提樹の隣に植えられていて、やや小ぶり。つぼみが付いていましたのでまもなく開花するでしょう。最後は無憂樹ですが、インドではSaraca indicaですが、残念ながら日本に伝わりませんでした。代わりの木として適当なものがなく、こちらでは「アマチャ」(ヤマアジサイの一種、ユキノシタ科 Hydrangea macrophylla var.thunbergii)を植えられています。ホームセンターで3株購入して最近植えたばかりです。
境内にある木のうちで最も大きな木はこのケヤキ。「区民誇りの木」に指定されています。目通りは400cm以上あります。
次に大きな木は赤門の脇に建つ語法大権現のオヤシロの脇に立つクロガネモチ。これも区民誇りの木です。こちらも目通り400cm以上。「天明の大火(1788年)」の時、火の手は赤門の前まで迫りましたが、鞍馬から来た天狗がうちわであおぎ、またこの木が水を吹いて防いだとか。
次は人為的に有名になった木です。写真家の水野克比古さんが自書で紹介されたため有名になったのが鐘楼脇のキョウチクトウです(写真矢印)。今は開花していませんは花に時期には見事に咲かせるそうです。地蔵堂側にももう一本。
ご住職から聞いた面白い言い伝えを一つ。かつて、浄福寺の西隣には大超寺というお寺がありました。現在は岩倉花園町に移転し、跡地にはマンションが建っています。浄福寺の東隣には慧光寺があります。
それぞれのお寺には大きなイチョウの木があって大超寺と慧光寺はオスの木、常福寺はメスの木。浄福寺のイチョウにはたくさんの実が出来ました。大超寺の小僧は「大超寺のイチョウがあるから浄福寺のイチョウに実がなるのだ。実を半分よこせ」と主張しました。浄福寺の小僧は「慧光寺にもオスのイチョウがある。」と言って主張をはねのけました。
その後、大超寺は移転し、大超寺のイチョウも切り倒されたところ、浄福寺のイチョウは結実しなくなりましたとさ。(写真は18世紀に出版された都名所図会。浄福寺と大超寺が隣りあっています。国際日本文化研究センターの稀本・資料データベースから引用)
最後に、ご住職からエコの取り組みのお話をうかがいました。浄福寺は幼稚園を経営していますが、木陰を利用してエアコンなしの園舎となっているとか。実際にその様子を見せていただきました。ご存知のとおり京都の夏は大変暑いのですが、校庭全体を覆うくらい木を大きく育て、園舎に夏の暑い太陽光が当たらないように工夫されています。おかげでエアコンいらず、だそうです。
緑に包まれた幼稚園です。いずれ、運動場の真ん中にも大きな木を植えたいとか。
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