京の名水のひとつ「桃の井」は堺町通二条上ルの西側。天明元年(1781年)からこの地で造り酒屋を始めた「キンシ正宗」、現在は伏見に移転しましたが、造り酒屋としての建物と当時の道具がそのまま保存提示されている「堀野記念館」です。
「桃の井」は酒造りに使用されていましたが、中庭に取水口があります。
この水は京都三名水の一つ、梨木神社の「染井(そめのい)」と同じ地下水脈だそうです。灘の酒は六甲の硬水を用い、京の酒は地下水を汲み上げた軟水。ここに「灘の男酒、京の女酒」と呼ばれる味の違いが出るそうです。
実際に「桃の井」を試飲させていただきました。すごくまろやかな甘い水でした。これを毎日調理に使えば料理の味も一味よくなることでしょう。実際、周囲の料亭や喫茶でこの水が使われているとのことです。素材を生かした絶妙の味の京料理には辛口の酒は合いませんから。
ご近所の方たちが飲料水を汲みに来ていらっしゃいました。だれでも自由にというわけではなく、堀野記念館と年間契約をかわして取水されているそうでした。
明治時代、こちらの水を調査した記録が展示してありました。酒造業界の硬度はドイツ式によって測定されていたそうですが、その値は2.228です(3以下が軟水)。確かに軟水ですね。現在の測定方法はアメリカ式で、60mg/Lが軟水とされていますが、京都の水道水は平均40mg/Lです。京都の水は全般的に軟水ですね。だから料理によく合う。(ちなみに東京は65、関東圏で最高値は千葉の82です。かなり硬水に近い軟水です。)
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