剱岳(つるぎだけ)、標高2,999m、北アルプスの立山連峰に位置する。山塊すべてが険しい岩稜と雪渓からなり、日本アルプスにおいては峻険な山の一つ。「岩と雪の殿堂」とも呼ばれる。日本百名山に選定。 |
行程
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「剱岳と裏剱」写真集 その3
日本を代表する「岩と雪の殿堂」剱岳、はじめての登山です。しかも単独行。これはその登山記です。登ったのは1979年、登山記を記すのは2020年、その間40年以上経過し、記憶もあやふや、写真も変色してしまっていますが、思い出せる限り思い出して、人生記録としてなんとかまとめました。
<第四日目、剣山荘から剱沢を下る>
第四日目、本日の行程です。仙人池から裏剣を眺めます。
剱沢小屋>剱沢(1時間)平蔵谷出会(15分)長次郎谷出会(12分)真砂沢ロッジ(1時間20分)二股(2時間30分)仙人峠(15分)仙人池(20分)仙人峠(1時間30分)二股(1時間30分)真砂沢ロッジ(宿泊)
なお、真砂沢ロッジに大きな荷物をデポして仙人池をピストンしますので、おおむねコースタイムよりも短い時間で行ける予定です。
早朝、剱沢小屋から眺めた剣御前のモルゲンロートです。手前の影は別山尾根。
おなじく、モルゲンロートの剱岳。
剱沢小屋を出発し、広くて長い剱沢を下ります。本日の天候も良好! 勾配は緩やかなのでアイゼンは必要ありません。(雪渓を歩き慣れてない方は軽アイゼン程度を装着したほうが転倒の気遣いなく歩けます。)
1時間弱で平蔵谷(へいぞうたん)出会に到着。大きな2つの岩が目印です。なお、この地域の昔からの呼称で「谷」を「たん」と読みます。また「出会」とは2つの谷の合流点です。
平蔵谷出会から平蔵谷雪渓の全体を眺めました。最上部は昨日通過した「平蔵のコル」です。手が届きそうな距離感ですが、「平蔵のコル(標高2,835m)」まで全長は2kmあります。ここの標高はおよそ2,060mですので標高差は775mです。もうひとつの長次郎雪渓よりも勾配がやや急なので、雪渓登りコースとしてはやや難易度が高くなります。ピッケルとアイゼンは必須です。いつか登りたい! (1982年、ついに平蔵谷を登ったぞ!)
引き続き剱沢雪渓を下っていきます。
次に現れたのは長次郎谷出会です。この雪渓はうねっているので最上部は見渡せません。こちらは平蔵谷にくらべて勾配は緩やか、上り詰めると剱岳山頂に直接アプローチできます。谷の左側は源次郎尾根、右側は八ツ峰です。
なお、「長次郎」という名称は、明治から昭和にかけて山岳ガイドとして活躍し、明治40年にこの雪渓から登頂を果たした宇治長次郎氏にちなんで長次郎雪渓と名付けられました。
まもなく真砂沢に到着です。剱沢雪渓もここまでです。なお、このエリアはテント場になっていて、すでに多くのテントが張られていますね。八ツ峰などに向かうクライマーのベースキャンプになっているのかな。また、小さな山小屋ですが「真砂沢ロッジ」もあり、今夜宿泊する予定です。
<仙人池へ>
剱岳の山頂から伸びる尾根は東西南北に向かっていくつかあります。南に伸びるのは別山尾根、これは一般の登山コースになっています。南東に伸びる源次郎尾根はクライマー向けの登山ルート。そしてもう一つ南東に伸びる尾根が有名な「八ツ峰」です。鋭く天に向かって尖った針鋒列はヨーロッパアルプスの鋭鋒群を彷彿させ、とくに仙人池からの眺めは、そこに立つ限られた人のみ眺めることのできる大絶景です。本日はここを目指します。
真砂沢ロッジに荷物をデポさせてもらい、仙人池に向かって出発、一時間ちょっとで二股に到着です。ここで沢に架けられた吊橋を渡りますが、この吊橋が「難物」です! 細いワイヤに丸太が不等間隔に渡され、それらを継ぐように幅の狭い板が中央に置かれているのです。しかーし、ところどころ板が抜け落ちている! 写真は、ちょうど抜け落ちたところを渡っています。手すり代わりの2本のワイヤが命綱(?)、下をゴーゴーと流れる沢の上を恐る恐る渡るのです。カニのヨコバイよりも怖かった!
2020年現在、この吊橋は改善され、この写真のように「危険な橋」ではなくなっています。丸太の横棒と縦板のかわりに頑丈そうな金網が隙間なく敷き詰められていて、隙間から転落、という危険はなくなりました!
渡っている途中、手を振っていますが顔面蒼白状態です(冷汗)。なお、荷物はすべて下ろし、身軽になって橋を渡っているところの写真撮影を休憩中の登山者にお願いしました。うしろに見える雪渓は「三ノ窓雪渓」。
吊橋を渡れば、あとは単調な仙人新道をひたすら登り2時間少しで仙人池に到着です。尾根に取り付いたところで東を眺めると剱沢は狭い谷となってさらに流れていきます。最後は十字峡で下ノ廊下に合流します。うしろに鹿島槍ヶ岳と五竜岳?が見えています。
登りは単調ですが途中の眺めは素晴らしい。高度を上げていくにつれて八ツ峰、そして三ノ窓雪渓が徐々に姿を表し始めます。三ノ窓雪渓をズーム!
仙人新道を中程まで登ったところで、ついに三ノ窓雪渓の全体像を見ることが出来ました。なお、剱岳山頂から伸びる雪渓は永年の調査により、2012年、氷河に認定されました。(剱岳の雪渓でいえば、2020年現在、三ノ窓雪渓、小窓雪渓、池ノ谷雪渓の3つの雪渓が氷河に認定されています。平蔵谷や長次郎谷は氷河ではないのでしょうか。。)
三ノ窓雪渓をバックにセルフタイマーで記念撮影。
<仙人池で逆さ剱を見る!>
仙人池に到着。そして、裏剣の全貌が目の前に広がります。静かな水面には逆さ剣が映っています! なお、剱岳の本峰は八ツ峰のうしろに隠れてここから見えません。(この写真だけは元の色が復元できません。Photoshopを駆使?して幾度となく編集したのですが、まだ技量不足のようです。新しい技を覚えたら、また挑戦します。)
八ツ峰の頭と三ノ窓をズームしました。チンネと第I峰が天を突く。まさに剣(つるぎ)、険しいですね。午後になって少し空気が霞んできました。
仙人池の湖畔で記念撮影。八ツ峰の左は、別山、真砂岳、富士ノ折立。昨日、剱岳山頂からカニのヨコバイを下るときにお会いした二人連れに、偶然ここで再会しましたのでシャッターをお願いしました。このあと、阿曽原温泉から欅平へ、そして黒部峡谷鉄道で奈月温泉へ下られるとのことでした。
何度見ても絵になる景色ですね。どのルートからアプローチしても、一日ではここにたどり着けない遠い場所です。容易に見ることが出来ない価値ある絶景です。
<真砂沢へ下る>
八ツ峰の大展望をたっぷり堪能した後、今日の宿泊地、真砂沢ロッジに戻ります。途中で小窓雪渓を撮影。午後の八ツ峰は少し霞んできました。
二股まで戻りました。
真砂沢ロッジに戻ってきました。これを撮影したポイントは不明ですが、おそらく剱沢の末端だと思われます。
宿泊した真砂沢ロッジは剱沢の中程、剱沢雪渓の末端に位置する定員がたったの20人という小さな小さな山小屋です。標高1780mほど。
<第五日目、黒部湖へ>
第五日目、本日の行程です。
真砂沢ロッジ(2時間)ハシゴ谷乗越(1時間)内蔵助平(1時間20分)内蔵助谷出会(1時間30分)黒部ダム>扇沢>信濃大町>国鉄で自宅へ
本日のコースタイムは約6時間ですが、大部分が林間ルートであるため途中で撮影した写真はたったの3枚でした。写真の枚数が少なかった理由は、実はもう一つあります。小屋を出発する前に耳にした情報、、、
「最近、このコースにはクマが出るらしい」
なにぃ!そんな殺生な、、、。 熊除けの鈴はもちろん持参していません。これはもう、脇目も振らず、ひたすら歩き続けるしかありませんでした。以下、貴重な3枚の写真をご覧ください。
結局、ハシゴ谷乗越から内蔵助平を通過するまで一度もシャッターを押していません。はじめての写真は4時間経過してから、内蔵助谷をほぼ下ったところでした。内蔵助の沢はこの先の内蔵助出会で黒部川下ノ廊下に合流します。右に丸山東壁、正面ギザギザは赤沢岳からスバリ岳への稜線。赤沢岳の右下に、黒部川からダム上に登るためのジグザグの道路が見えています。右うしろは船窪岳かな?
内蔵助出会を通過、下ノ廊下に入ってからの写真です。正確なポイントはわかりません。
黒部ダムが見えました。着いた! いくら人気のないコースとはいえ、真砂沢ロッジを出発してここまで、たった一人の登山者にしかすれ違いませんでした。ここまで黒部川の右岸を歩いてきましたが、ダム直前の橋(手すりのない板を渡したのみの橋が見えますね。コンクリートの立派な橋脚が3つ作られているので、将来立派な橋が建造されるかも)で対岸に渡ります。
さて、これで今日のアルバイトが終わったわけではありません。最後の心臓破りの難関が待っています。日本一の高さを誇る黒部ダム(高さ186m)のえん堤まで登らねばなりません!
ダムのえん堤に無事到着! 一日ほとんど誰にも出会わない単独行、かつ不人気コースとあって行動中は大いに不安でしたが、なんとかゴールできました。これで本当の意味で「ひと安心」。なお、コースは荒れておらず歩きやすかったと記憶しています。数日前に歩いた立山の稜線を仰ぎました。おつかれ山。
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